男性更年期について

帝京大学医学部泌尿器科学教室主任教授
同付属病院泌尿器科長

堀江 重郎 先生
(ほりえ・しげお)

1960年生まれ。医学博士。1985東京大学医学部卒業。東京大学医学部、米国テキサス大学、パークランド記念病院、国立がんセンター中央病院、東京大学医科学研究所などを経て、1998年東京大学医学部講師、2002年杏林大学医学部助教授。2003年より帝京大学医学部泌尿器科学教室主任教授、同付属病院泌尿器科長。

男性にもある「更年期」

 からだが新しいホルモン環境になじむまで、違和感をもちながらも慣れていく時間、それがいわゆる「更年期」です。 更年期障害といえば女性だけの問題と思われがちですが、中高年ともなれば男性も男性ホルモンが減り始めます。男性ホルモンの量は唾液や血液で測ることができるのですが、その分泌量は20代の頃が最も高く、以降少しずつ下がってきます。
 では、男性ホルモンの低下によってどんな影響が出るか。わかりやすい例としては、いままで朝までぐっすり眠れていたのに、深夜にトイレに行くようになるのもそのひとつ。男性ホルモンが減少すると、「抗利尿ホルモン」が一緒に減ってきます。このホルモンは尿を濃くしてためておくホルモンなので、減少すれば尿が薄くなり、量が増えてくるのです。また、いわゆる中年太りも男性ホルモンの減少が原因かもしれないと目されています。
 ホルモン減少の影響は人によってさまざまで、中には「じっとしていても汗をかく」「肩や腰などからだが痛む」「ゴルフの計画も、同僚との会話もおっくう」といった不調が現れることがあります。ただ男性のホルモン量は個人差が大きく、80代でも20歳並みの方もいます。また、年齢による減り方も女性に比べゆるやかですので、多くの方では強い症状が現れることはありません。

男性ホルモンは“社会性ホルモン”

 さて、男性ホルモンには筋骨隆々の男らしい肉体を作るだけでなく、仕事面でも集中力や判断力の助けになり、いざ勝負に出るときには攻撃性を高める役割を果たします。江戸時代から"男は閾(しきい)を跨(また)げば七人の敵あり"と言われていますが、男性はホルモンの力を借りて、その厳しい社会に堪えうるというわけです。
 実際、ロンドンの金融市場で活躍するトレーダーは、もうけの大きい優秀なトレーダーほど男性ホルモンが多いという研究結果があります。男児でも、100m走で1位になった子は男性ホルモン値が上がるとか。競争で得た自信は男性ホルモンをさらに増やし、その勢いでさらなる競争へ…。男性はホルモンによって常に駆り立てられる存在なのかもしれません。
 一方、男性ホルモンには自分をアピールする能力や社交性を豊かにする、いわば"社会性ホルモン"としての働きもあります。これが減ると人づき合いがおっくうになるのもうなずけますが、そのまま引きこもっていると男性ホルモンは目減りする一方。ニワトリと卵のような話ですが、"社会性ホルモン"を増やしてくれるのもまた"社会"なのです。人との楽しい出会いやつき合いがホルモンを増やし、元気を育みます。
 ですから、男の更年期は1人で受け止めず、仲間の力で迎え撃つのが極意。中高年に同窓会が盛んなのは、男性ホルモンを増やす本能的な行動なのかもしれません。「最近どうも調子がね…」「俺も」なんてビョーキ自慢ができる仲間づき合いもよいものです。

敵はストレスにあり

イラスト ここで、ちょっと気になる研究報告をご紹介しましょう。米国で1987年と1997年の男性ホルモン値を比較したところ、1987年の方が男性ホルモンは高いとのこと。つまり、近年男性ホルモンのレベルが下がってきている可能性があるのです。また、日本の40~50代は60代より男性ホルモンが少ないことも報告されています。
 その原因は生活習慣病や運動不足などが考えられますが、確実に言えるのは、ストレスの影響でしょう。男性ホルモンが分泌するのは副交感神経が優位になっているとき。つまり、楽しい気分で、心地よさを感じたり、リラックスしているときに作られます。逆にストレスや緊張、イライラしているときには交感神経が優位になって男性ホルモンは出なくなってしまいます。
  男性ホルモンの減少は、いかに現代の男性たちがストレスにさらされているかの証です。しかし"7人の敵"ならぬ週7日のストレスに立ち向かうにも、男性ホルモンは十分に欲しいところ。
 そこで、おすすめしたいのは副交感神経を刺激するリラクゼーションの時間を持つことです。交感神経が緊張している状態ではからだは力み、縮んで硬くなっていますので、ストレッチやヨガでゆっくり伸ばしたり、長く深い呼吸をとって気持ちを落ち着けることも効果があります。運動も男性ホルモン分泌を高めます。特に1日の生活の中でホルモン値が最も高くなる朝の時間帯はぜひ有効活用したいもの。朝、集まってラジオ体操を行うのは男性ホルモンのためにもよいことなのです。

“朝のサイン”は健康寿命のバロメーター

 ところで、男性ホルモンといえばやはり気になるのは性機能の問題でしょう。ちょっと驚く話ですが、朝の勃起の有無は健康寿命と深い関係があります。「そんな露骨な…」と眉をひそめた方も、真面目な話ですからひとまず読んでみてください。
 実は朝の勃起が減るのは男性ホルモンだけの問題ではなく、動脈硬化が起こっているシグナルである場合もあります。陰茎部分の動脈はほかの部分に比べてとても細いので、動脈硬化による目づまりの影響を最初に受け、血流が滞りやすいのです。その他、先ほども述べたストレスや、睡眠時無呼吸症なども関係しており、健康度を表すバロメーターともいえます。明らかに朝の勃起が減っていたら、何らかの生活習慣病が起こっているかもしれません。
 勃起は快食・快便と同様の生理現象です。男性の健康寿命のバロメーターとしてとても大事なことなのですが、意外なことに普段あまり気にしていない男性が多いとか。ときには朝の“わが身”を振り返り、ご自身の健康寿命や、ストレス対策を考えるきっかけにしてはいかがでしょう。

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