公開講座・セミナー情報バックナンバー(2009年)

講師
健保連大阪中央病院 副院長 伊熊 健一郎 先生
大阪市立大学医学部附属病院 総合診療センター 森村 美奈 先生
パネラー
かつみ・さゆり さゆり さん
日時
2009年2月27日(金)
会場
そごう劇場(大阪市中央区)

伊熊 健一郎 先生

わかれば安心 月経痛(生理痛)の原因と対処法
~薬と腹腔鏡下手術のコラボレーション~

健保連
大阪中央病院副院長(婦人科)
伊熊 健一郎 先生(いくま・けんいちろう)

徳島大学医学部卒。専門は産婦人科。兵庫医科大学病院、宝塚市立病院を経て、現在に至る。子宮筋腫、子宮内膜症などの腹腔鏡下手術の第一人者。

負担が少ない腹腔鏡下手術

 妊娠準備のために厚くなった子宮の内膜が、妊娠しなかったときにはがれ落ちて出血とともに出るのが、月経です。この内膜が子宮内腔以外にできた状態が子宮内膜症と呼ばれるもので、子宮の筋肉層の中にできると子宮腺筋症、卵巣にできると卵巣チョコレートのう胞といいます。子宮内膜症は、全国で約15万人が治療を受けており、潜在患者を含めると20~30代女性の10人に1人の割合といわれています。
 ほかには、子宮の良性腫瘍である子宮筋腫があります。30~40代女性の5人に1人の割合といわれています。いずれも月経痛(生理痛)や月経時以外の腰痛など痛みをともなう症状が出ることが多いため、これらの痛みを感じたら、まず診察を受けてください。
 治療方法には、薬物療法と手術療法とがあります。薬物療法には、鎮痛薬や漢方薬を使って痛みを抑える対症療法があります。また、経口避妊薬(低用量ピル)を使い、妊娠時に近いホルモン状態にすることで月経痛などの症状を抑える偽妊娠療法、黄体ホルモンによって、女性ホルモンの分泌を抑え、直接病巣にもはたらき症状を改善させるジエノゲスト療法、性腺刺激ホルモンの分泌を抑えて閉経時に近い状態を作り病巣を小さくしていく偽閉経療法などが代表的な薬物療法です。そのなかで2008年に一部の低用量ピルと同じ成分を含む薬剤が子宮内膜症による月経痛に対し保険適用になりました。
 手術には開腹のほか、内視鏡によるもの、メスを使わないUAE(子宮動脈塞栓術)、FUS(集束超音波療法)などがあります。後者の2つは保険適用でないため自費診療となります。
 私の専門は内視鏡手術の一つである腹腔鏡下手術です。おへその所から入れたカメラでお腹の中をモニターテレビに映して、下腹部の2~3ヵ所から入れた鉗子(かんし)で手術を進めていきます。開腹と比べ創(きず)が小さく、体への負担も軽減できる方法です。
 薬剤と手術との使い分けに関しては、医師と治療方法をよく相談しながら、コラボレートして進めていくことが望ましいでしょう。

腹腔鏡下手術の状況

伊熊先生への質問と回答
Q
「生理痛のときに鎮痛薬を使っていますが、いつ服用するのがいいのでしょうか?痛くなってからの方がいいのでしょうか?
A
 痛みに関しては、ある域を超えると鎮痛薬ではコントロールできなくなることがあります。できれば、痛みが強くなる前に早めに服用されるのが良いのではと思われます。ただし、薬の成分はそれぞれに違い、人によって合う、合わないがあります。また、同じように服用のタイミングも違いますので、自分に合う薬を見つけるようにしてください。
 痛みがあるときには、まずは、診察を受けることをお勧めします。診察する医師との信頼関係を築けることで日常生活にも、安心感を持ってもらうことが、メンタル面でも大切なことだと思います。
Q
「子宮筋腫の手術後、2年目で再発をしてしまいました。予防する方法はないでしょうか?」
A
 筋腫を取り除く手術では、筋腫の数が多かったり、小さな筋腫などは一度に取りきれないこともあり、再度手術が必要となることもあります。予防はできませんので、経過観察が必要になってきます。定期的に診療に行かれることが望ましいでしょう。

森村 美奈 先生

生理痛に悩む女性のこころとからだ

大阪市立大学医学部附属病院
総合診療センター 講師
森村 美奈 先生(もりむら・みな)

帝京大医学部卒。専門は産婦人科と女性の心身医療、医学教育。森村医院、大阪市立大大学院医学研究科産科婦人科教室などを経て現在卒後医学教育学講師。

悪循環になる“痛み”我慢はしない

 月経に伴う症状のうち、生活に支障のあるものを月経困難症と呼びます。これには、子宮内膜症や子宮筋腫などが原因で起こる「器質性」と明らかな病変がない「機能性」とがあります。その他、月経1週間前ごろにいらいらやむくみなどが起こることがありますが、これを月経前症候群といいます。
 女性ホルモンの働きによる排卵周期のどの時期に症状がでるのかを知るためにも、基礎体温を測ることをお勧めします。機能性の場合には症状がホルモンの変化と関連していることがあり、自分の痛みの原因がわかると、気持ちの上でも楽に受け止められる効果があります。また、体温の変化の様子によって、排卵が正常かどうかを知ることもできます。自分の体と向き合い、適切な月経とのつき合い方を知ることが大切です。
 痛みの感じ方は、人それぞれですが、ストレスを抱えていると痛みを強く感じやすい傾向があるなど、心の状態に関係している可能性があります。また、男性より女性の方が痛みを感じる刺激のレベル(疼痛域値)が低く、月経困難症の女性では、さらに低いという報告があります。痛みに耐えてストレスを抱え込み、さらに痛みを感じやすくなると悪循環を起こします。我慢しすぎることなく、早く治療を始めましょう。
 機能性月経困難症の対症療法の治療として、鎮痛薬や漢方薬などでコントロールしますが、効きにくい場合にはホルモン治療など別の選択肢もあります。
 よく“薬はからだに悪い”と我慢している女性がいますが、治療によって快適な生活を送れるようになるかもしれません。自分にとって適切な月経とのつき合い方を知っておくことが大切です。ぜひ、医師に相談してください。

年齢別・月経痛がある時の対応方法

森村先生への質問と回答
Q
「若い頃に比べて、生理痛がきつくなっているような気がします。また、生理痛以外の症状も気になります」
A
 生理痛の理由やパターンは様々です。10代のころには、排卵がうまくいっていない場合もあり、生理痛が軽く感じることがあります。一方で、排卵が順調になると月経に関連する症状が強まるため、不安を感じる人もいるでしょう。このようにホルモンの作用が原因のことが多いのですが、筋腫や内膜症のはじまりの可能性もあります。痛みが以前より強くなってきたり、月経の量が異常に増えてきた場合には、診察を受けた方がよいでしょう。月経前に起きる月経前症候群では気分が悪くなったり、むくみがでたりします。また、腸が動きにくくなることで、便秘がちになり、おなかが張って、排尿が悪くなるなど様々な症状がみられます。月経のはじまりのころには片頭痛を起こす人も多いです。
Q
「女性特有の病気はほかにどんなものがあるのでしょうか?」
A
 女性の病気の中で、増えているのが乳ガンです。月経の後など乳腺が張っていない時期を選んで検診を受けることをお勧めします。医師による触診のほか、マンモグラフィーや超音波検査などがあります。30歳前半までは乳腺組織が多いので、超音波の方がわかりやすい場合もあります。1年に1度を目安に検診するようにしてください。

[パネルディスカッション]
生理痛 ~1人で悩まないで 痛いのはあなただけじゃない~

伊熊 健一郎 先生

 

より専門化する医療、自分に合った病院を探そう

健保連
大阪中央病院副院長(婦人科)
伊熊 健一郎 先生(いくま・けんいちろう)

職場や身近に相談できる人を見つけておくこと

大阪市立大学医学部附属病院
総合診療センター 講師
森村 美奈 先生(もりむら・みな)

 

森村 美奈 先生

さゆりさん

 

私のような後悔はしないで。早めの受診を

神戸市出身。大阪音楽大学短期大学部ピアノ科中退。
よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。
「かつみ・さゆり」として、夫婦漫才やレポーターとして
活躍中。

 

―明るく、元気なさゆりさんに大変つらい経験があるとか

さゆり
 7年前に子宮筋腫と子宮内膜症、卵巣チョコレートのう胞との診断で手術をしました。10代から生理痛で寝込むような症状で、薬も飲んでいたのですが、みんなもそうだろうなと、一生懸命我慢していました。20歳のとき舞台のそでで、貧血と痛みで倒れて救急車で初めて婦人科に。そのときの病院の印象が怖く、治療はせずにほったらかし。10年経ったころには、貧血もひどく、立っていられない状態になり、再び救急車で病院へ。そこで先生に「よく我慢しましたね」と声をかけられて涙がポロポロ・・・。我慢が足りないと思っていたけれど、本当にひどい状態なんだと、ホッとしたんですね。同時に、何でもっと早く治療をしなかったのかと悔しい思いもしました。私のような思いをしてほしくないと、1人でも多くの女性に伝えたいと思っています。

伊熊
 10年間も空いてしまったのは残念ですね。医師は味方であると信じて、我慢せずに診察をと、強く言いたいです。

森村
 怖いという気持ちはわかりますが、最近は、患者さんの気持ちに寄り添う診察をと医師も努力しています。

さゆり
 病院によっては赤ちゃんの生まれる人と手術する人が一緒の病棟にいることもありますが、精神的にキツイのではという感じがします。

伊熊
 医療もより専門化する方向へ変わっています。病院が何に力を入れているのかを分かりやすくお知らせし、患者を病院間で紹介することも増えています。

森村
 情報を集め、自分に合う病院選びをしてもらえればと思います。

さゆり
 治療を遅らせてしまったもう一つの理由は、仕事です。年々責任が重くなり、休んで迷惑を掛けられないという気持ちになっていました。手術前もグズグズしていたら、先生にまたひと言、「今ここで我慢して1年は芸人としてやっていけるかも知れないが、人間として生きていないかも知れないよ」。元気に生きていてこその仕事と、目が覚めました。

パネルディスカッション


森村
 仕事を休む勇気が大事です。週末も診療している病院もありますし、治療も短期間で出来るものも増えていますし、1日、休みを取って受診してもらいたいです。

さゆり
 手術を含めた1ヵ月の休みは、神様がくれたプレゼントだと思えました。みんなに支えられ、生きているということを改めて勉強できました。

伊熊
 腹腔鏡下手術では数日の入院でも大丈夫ですが、入院は1週間としています。退院後すぐに女性は頑張ってしまうので、体だけでなく、心の癒やしの時間として女性を守るためと考えています。

さゆり
 身近な人、パートナーの理解も大事なことだとわかりました。借金がたくさんあるあんな人(かつみさん)ですが(笑)、感謝しました。診察にも同席し、病状も理解してくれました。精神的に不安定なときも責めるのではなく、「負けたらあかん、病気でこうなっているだけや」と励ましてくれて、本当にありがたかったです。

森村
 ステキですね。みんながかつみさんのようにできるとは限りませんが、周囲に理解してもらえる人を持つことは必要です。会社であれば産業医か女性の先輩や同僚などに声をかけ、悩みを共有してもらうとよいでしょう。

―最後にひと言ずつお願いします

さゆり
 この病気になったのは“検査親善大使”になる使命が与えられているのだと思っています。気になることがあれば、早めに受診してください。何もなければ安心を手に入れることができます。

森村
 生理痛の悩みは、仕事の忙しさの中で立ち止まることを知らせてくれています。健康を見直す機会にしてください。

伊熊
 今日の出会いと話題がよい治療、よい人生に向かっていく扉を開くことになればと思っています。

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