働き盛り世代を襲う男性更年期障害 男性ホルモン低下が招く多様な症状

大阪大学大学院医学系研究科
器官制御外科学(泌尿器科)准教授

辻村 晃
(つじむら・あきら)

兵庫医科大学卒業。国立大阪病院勤務、ニューヨーク大学留学などを経て2010年より現職。大阪大学医学部附属病院泌尿器科で男性更年期外来や性機能外来も担当。著書に『男性性機能不全-ED関連の基礎・臨床研究の進歩-』ほか。

あなたは「最近、パワー不足で・・・」などと感じていないだろうか?もしかしたら男性更年期障害かもしれない。
それが重大な疾患の予兆であることもー。ED(勃起障害)を含め、男性更年期障害の治療に取り組む大阪大学大学院医学系研究科器官制御外科学(泌尿器科)准教授・辻村晃先生に聞いた。

「男性更年期障害」は年齢層が広く悩みも長期間

 更年期障害といえば女性の悩み、とされたのはずいぶん前のこと。いまや「男性更年期障害」も広く認知されつつあり、「自分もそうではないか?」と診察を求める人は少なくない。
 「女性の更年期は閉経期をはさんだ数年間であるのが一般的なのに対し、男性更年期障害は概ね40歳以降、60代、70代でも発症の可能性があります。しかも女性より長期間つらい思いをすることもあるのです」
 こう語るのは、大阪大学大学院医学系研究科器官制御外科学(泌尿器科)准教授で、医学部附属病院泌尿器科で男性更年期外来(要予約)を担当する医師、辻村晃先生である。

イラスト では具体的に、男性更年期障害とはどんなものなのか?辻村先生によれば、直接の原因は男性ホルモンであるテストステロンが加齢に伴って低下すること。その症状は多様で、大別すると1つ目が「性機能関連症状」。これは性欲の低下やED(勃起障害)である。2つ目は「精神・心理症状」で、抑うつ感や落胆、不安、疲労感、記憶力や集中力の低下など。3つ目は「身体症状」だ。女性と同じく発汗やほてり、睡眠障害、関節・筋肉関連の症状などが出てくる。
 厄介なのは、ある症状が別の症状を助長したり、根本原因であるテストステロンの低下を進行させることだ。
  「例えば、最近ビジネスマンの間で何かと話題になっているうつ病ですが、その前段症状ともいわれる抑うつ感がEDを招く、反対にEDが抑うつ感を招くという関係が認められています。また、テストステロンの低下が抑うつ感につながる一方、抑うつ状態にあるとテストステロンが低下することも分かっています」
 そして、こう続ける。
 「なかでもEDについては、日本人の有病率は世界的にも高いというデータがあります。社会の複雑化が進み、より強いストレスを受けやすいことも背景の一端ではないでしょうか。私の外来にみえる方々も、初めは抑うつ感を主訴とするケースが非常に多いのですが、話をうかがうにつれ、実はEDも自覚していた、ということは頻繁にあります。むしろEDこそ大きな悩みであっても、男性更年期障害とか抑うつ感といった訴え方のほうが切り出しやすいのかもしれません」
 ともあれEDを自覚したら、早めに診察を受けることが望ましい。なぜなら、EDは生命に関わる病気のサインかもしれないからだ。

EDの症状を自覚してから3年ほどで重病のおそれも

 「日本では、欧米などと違いEDが離婚の理由になる例は少なく、『もういい年齢なのだから』と放置する方々がいらっしゃるのも現実でしょう。しかしEDは単に性機能の衰えにとどまらず、メタボリック・シンドロームの要素である高血圧、高血糖、高脂血症とつながっていることがあるのです」
 さらに、メタボであると診断された人々のIIEF(国際勃起障害機能スコア)を調べた結果、メタボとEDにも相関関係が認められるという。そのうえ、衝撃的ともいえるデータを明かす。
 「狭心症や心筋梗塞など心血管疾患を患った男性のうち67%は、発症の平均3年9ヵ月前にEDを自覚していたとの調査結果が、2003年に発表されました。また06年には、心血管疾患の男性患者はほとんど全員が、2~3年前からEDだったとも報告されました。このように、EDを自覚して3年ほどの間に心血管疾患が発症する可能性は高いといわざるを得ないのです」
 メタボは、動脈硬化を加速させる大きなリスク・ファクターだ。そして男性更年期におけるEDは、動脈硬化が原因の1つとなっていることもある。陰茎動脈は直径が1~2ミリと細いため、動脈硬化が進むと早い段階でEDという自覚症状にいたるのだ。

 一方、心臓の冠動脈は陰茎動脈よりも太く、直径3~4ミリ。このため動脈硬化が引き起こす疾患も、EDに比べ遅めに発症するものと考えられる。このほか、内頚動脈は直径5~7ミリ。脳梗塞にもつながり得る一過性脳虚血発作や、脳卒中に関与する。
 より細い陰茎動脈の硬化がEDという形で顕在化した場合には、より太い他の動脈も硬化が始まり、血管の中が狭くなったり詰まったりし始めているサインとみなすべきなのだ。

イラスト

ED治療に「PDE5阻害剤」 その働きとさらなるメリット

 逆に考えると、EDの診察を発端とし、重大な疾患も未然に防ぐチャンスが得られるかもしれないのである。
 そのEDの治療には現在、「PDE5阻害剤」という薬(医師の処方が必要)を使う例が多い。
 「性的興奮の刺激により陰茎の平滑筋が弛緩し、海綿体内に血液が流入し、充血することで勃起が起こります。ただ、この時、陰茎の平滑筋を弛緩させる物質はPDE5という酵素で分解されてしまうのです。この酵素の働きを抑え、勃起を助け維持させる薬がPDE5阻害剤です。

 

イラスト 時々誤解があるのですが、ED治療薬は決して性的刺激を強めたり、神経を興奮させるものではありません」
 加えて辻村先生が先述したとおり、ED、抑うつ感、男性ホルモン(テストステロン)は互いに影響しあう。そのためPDE5阻害剤の服用は、EDへの効果を発揮するにとどまらない。結果的に「抑うつ感が緩和される」「男性ホルモンが増加する」という現象を起こすこともある。もとからPDE5阻害剤が抗うつ薬に類する薬理作用をもつわけではないし、男性ホルモンを直接的に増やすわけでもないが、どうやら好循環をつくりあげてくれるらしい。まずPDE5阻害剤によってEDが改善。すると気持ちも晴れ晴れとしてくる。そうすれば、抑うつ感のせいでなおさら低下していた男性ホルモンが回復へ向かう。それがEDの改善を一段と促す、といったサイクルだ。
 辻村先生は、主に40代からの男性読者に対しこう呼びかける。
 「男性ホルモンが減ると多くの症状が現れます。その1つがEDで、治療に対応できる医療機関では、男性ホルモンはもちろん、動脈硬化もチェックします。気になっている方々は、一度受診なさってはいかがでしょう」
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 男性ホルモンの95%は睾丸でつくられる。それらの代表格がテストステロン。さまざまな作用をもつだけに、血中のテストステロンが減少すると多岐にわたる症状が発現。40歳以上でEDや抑うつ感、睡眠障害、筋力低下などを訴え、テストステロンが一定水準未満に低下の場合、男性更年期障害と診断される。
 うつ症状が同程度のED患者らを二分し、一方に偽薬(プラセボ)、他方にPDE5阻害剤を投与した結果、PDE5阻害剤投与群の方が、うつ症状スコアはより大きく軽減。EDが改善し、気持ちが明るくなるようだ。

 

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