強皮症ってどんな病気?
強皮症は、免疫異常など、複雑な要因が絡み合って発症し、皮膚や内臓が硬くなる病気で、全国で推定3万人の患者さんがいるといわれています。
強皮症は、皮膚や内臓が硬くなるという特徴を持つ病気で、「SSc:Systemic Sclerosis:全身性硬化症」という病名で呼ばれることもあります。日本における推定患者数は約3万人で、男女比は1:12と女性に多く、おもに30~50歳代で発症します。

なぜ強皮症になるのか、今のところ根本的な原因はわかっていません。おそらく、強皮症の原因は一つではなく、「
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線維化
通常、皮膚はコラーゲンのはたらきで健康な状態を保っています。その生成と分解のバランスが崩れ、コラーゲンが蓄積されていく状態を「線維化」といいます。
強皮症で皮膚が硬くなるのは、線維化による症状です。 -
血管障害
強皮症の患者さんでは、血管障害により手指が白・紫・赤色に変色するレイノー現象があらわれます。レイノー現象が進むと、指先や足の
潰瘍 (皮膚や粘膜に傷がつき穴があいた状態)、さらには壊疽 (潰瘍がさらに深く重症になった状態)などの症状がみられることがあります。 -
自己免疫
細菌やウイルスなど、体の外から侵入してきた外敵から自分の体を守るシステムを「免疫」といいます。ところが、間違って自分の体の成分を外敵とみなして攻撃し、破壊しようとすることがあります。この状態を「自己免疫」と呼び、自己抗体がほとんどの患者さんで検出されます。


強皮症は
どの診療科を
受診すればいいの?
強皮症を専門的に診るのは、膠原病内科、リウマチ内科、皮膚科などにいる強皮症の専門医です。まず、かかりつけの内科や皮膚科などに相談し、必要な場合は専門医に紹介されるのが一般的です。
強皮症では、患者さんによって重症度や進行スピードは異なり、症状もさまざまです。
強皮症が疑われる場合は、血液検査で抗トポイソメラーゼⅠ抗体、抗セントロメア抗体、抗RNAポリメラーゼⅢ抗体などの有無を調べるとともに、皮膚の症状などいくつかの項目からなる診断基準と分類基準を参考に専門医が診断しています。

強皮症にはどんな症状があるの?
強皮症の症状は、突然、手指が白くなるレイノー現象ではじまることが多いのが特徴で、時間の経過とともに手指から徐々に全身の臓器に硬くなる症状が現れ、肺では「肺高血圧症」や「間質性肺炎」を発症する場合があります。
強皮症は、皮膚や内臓が硬くなるという特徴があり、その症状は手指の皮膚からはじまり、徐々に消化器、心臓、腎臓、肺など全身のさまざまな臓器に現れます。

皮膚の硬化(皮膚が硬くなる)が手指や足などに限定する場合を「限局皮膚硬化型」、手指を超えて胸や腹部にまで広がる場合を「びまん皮膚硬化型」と言い、進行の度合いや侵される臓器が異なるという違いがあります。
限局皮膚硬化型
- レイノー現象が数年~数十年続いた後、手指の皮膚硬化が表れる
- 皮膚硬化は手指、手背、顔、足、前腕に限定し、上腕、胸、腹には及ばない
- 手、顔の毛細血管拡張、皮膚カルシウム沈着を伴うことがある
- ごくまれに、発症後十数年から数十年たった後に肺高血圧症が表れることがある(2%以下)
- 抗セントロメア抗体陽性(70~80%)
びまん皮膚硬化型
- 皮膚硬化が比較的急速に進行するとともに、レイノー現象が表れる
- 皮膚硬化は手指や前腕だけでなく、体の中心方向へと拡大し、胸や腹にまで及ぶことがある
- 肺線維症、腎病変、消化管病変、心臓病変などの内臓病変を合併しやすい
- 抗セントロメア抗体は陰性
- 抗トポイソメラーゼI(Scl-70)抗体陽性(30%)、
抗 RNA ポリメラーゼ抗体陽性(15%)
「強皮症の全てがわかる本」保健同人社 2019年改訂新版 54ページ
表6:ルロイとメズガーらによる全身性強皮症の病型分類より引用
このように、患者さんによって現れる症状は異なるため、定期的に検査を行いながら、注意深く経過を観察します。
治療は、臓器病変ごとに考慮し、追加していきます。
多くの強皮症患者さんで最初の症状として現れるのがレイノー現象です。レイノー現象は、台所の水仕事など冷たいものを触ったときや、寒い場所で、突然手指が真っ白になったり、白~紫~赤と変色したりする現象です。
レイノー現象で受診するときの
ポイントは?
レイノー現象は寒冷刺激などで突然起こるため、受診時には症状が消えていることもあります。手指の変色が起こったときは、スマートフォンなどで画像として記録しておき、受診時に医師にみてもらうと良いでしょう。



レイノー現象が
起こったときの
対処法は?
レイノー現象が起きる患者さんでは、血行を良くする
肺高血圧症(強皮症でどうして肺高血圧症になるの?)は、息切れや疲労感(肺高血圧症のサインを見逃さないようにするには?)というありふれた症状からはじまりますが、進行すると生命をおびやかすこともあるため注意が必要です(強皮症に伴って発症する肺高血圧症になるとどうなるの?)。
