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てんかんと
ドラベ症候群

ドラベ症候群は、発熱や体温上昇時のけいれん(ひきつけ)として発症する重症の小児てんかん症候群のひとつで多くは1歳までに最初のけいれん性発作が起こります。
ここでは、てんかんの発作をコントロールするための治療や注意点について解説しています。

てんかんとは

てんかんは、脳を興奮させる神経と抑制する神経のバランスが崩れ、脳の中が過剰に興奮し、けいれんなどの発作(てんかん発作)を起こす病気で、てんかん発作が繰り返し起こる慢性疾患です。
脳内の興奮が起こる場所によって、全⾝あるいは、体の⽚側や⼀部にけいれんなどの発作が起こります。
⼦どもから⼤⼈まで発症する病気ですが、最も多い発症年齢は3歳以下で、18歳くらいまでの患者さんのてんかんを⼩児てんかんと呼んでいます。

てんかん発作が起こる仕組み

てんかん発作が起こる仕組み

焦点てんかん

脳の一部が興奮して起こる

全般てんかん

脳の全体が興奮して起こる

てんかんの原因

多くのてんかんは、原因不明ですが、原因のわかっているものの中では、脳のケガや脳梗塞など脳の形や構造の異常で起こるもの(構造性)、遺伝子の異常で起こるもの(素因性)、感染症など脳の病気が原因で起こるもの(感染性、代謝性、免疫性)など6つの原因によっても分類されています。
乳幼児の場合、妊娠中や出産時のトラブルが影響することもあります。

てんかん発作のタイプ

「てんかん発作=けいれん」と思うことが多いかもしれませんが、けいれんしない発作もあり、発作のタイプはさまざまです。
意識がある発作、意識がなくなる発作、全身の強いけいれんを伴う発作、手や足がピクピクする程度の発作、ぼーっと見つめて動かない発作などがあります。

てんかんじゅうせき状態

けいれん性発作が5分以上続いたり、短い発作が意識の戻らないうちに繰り返し起こったりする状態を「てんかんじゅうせき状態」といいます。
発作が30分以上続くと脳に重い障害を残す可能性が高くなり、ときに命にかかわることもありますので、迅速かつ適切な治療が必要です。

てんかんについてより詳細に知りたい方はこちら てんかんinfo(外部サイト)

ドラべ症候群とは

ドラベ症候群は、多くの場合1歳までに最初のけいれん性発作が起こり、その後も(けいれん性発作や意識がなくなる発作などの)さまざまな発作を繰り返す、重症の小児てんかん症候群の1つです。 発作は入浴や発熱などで誘発されやすく、てんかんじゅうせき状態になることも少なくありません。1歳を過ぎるとさまざまなタイプのてんかん発作が出現しますが、一般に使用される抗てんかん薬ではコントロールできないことがあり、次第に発達の遅れや運動失調が現れます。

患者数

日本では約3,000人いるとされていますが、診断されていない人もいるため、もう少し多いと考えられます。

原因

8割弱の患者さんは、「ナトリウムチャネル遺伝子SCN1A」という遺伝子に異常があることがわかっています。この遺伝子異常により神経細胞の過剰な興奮が起こり、難治性てんかんを発症すると考えられています。

ドラベ症候群の経過

経過イメージ図

ドラベ症候群の経過イメージ

てんかん発作

多くが⽣後4〜10ヵ⽉で熱性けいれんを経験します。体温上昇や光のちらつきなどが引き⾦となって発作が起こりやすく、5分以上けいれんが⽌まらないこと(てんかんじゅうせき状態)が多いです。年齢とともに発作タイプが変化し、幼児期以降は、回数が減ったり、数秒間ぼんやりする・⼿⾜がピクつくなどの発作がみられたりします。

発達遅滞・知的障害

発症までは異常はみられません。発症後に発達の伸び悩みがみられ、幼児期や学童期に顕在化してきます。障害の程度は、軽度から重度までさまざまです。
けいれん性発作から脳症になるといった稀な場合を除くと、できたことができなくなる退行現象はみられないといわれています。

運動機能障害

歩きだすのが遅れることがあり、歩けるようになっても、ふらつくことが多く、成人期以降に歩行障害が悪化することもあります。また、手先もあまり器用ではないことが多いです。

行動特性

動き回る、急に⾏動する、集中⼒に⽋けるなどのさまざまな発達障害の症状を伴うことがあります。治療薬の副作⽤の場合もあり判断が難しいこともあります。

ドラベ症候群の症状

発作が起こるきっかけは?

⼊浴や発熱など体温の上昇によって誘発されることが多いですが、光や模様に対する過敏性を持っていたり、睡眠、疲労、ストレス、感染症によって誘発されたりすることもあるので、⽇常⽣活のさまざまな刺激がきっかけになる可能性があります。

発作の誘発要因

体温の変化

体温の変化や周囲の温度変化で発作が誘発されます。わずかな温度変化でも発作を起こすので衣服や入浴、気温変化などに注意が必要です。

光や模様刺激

強い光の刺激、強い明暗差、コントラストの変化を伴う模様で発作が誘発されることがあります。
網⼾、ブラインド、幾何学模様やテレビなどディスプレイからの刺激などがあります。

寝不足や疲れ、ストレス

睡眠不⾜で、多くの⼈に発作が起こりやすくなります。
規則正しい⽣活を送ることと、慣れない場所や環境に注意し、⼗分な休息をとることが必要です。

風邪などの感染症

感染症にかかると発熱しなくても発作が起こることがあります。
また、発熱前に予告発作を起こすこともあります。

ドラベ症候群で起こりやすい発作症状は?

きょうちょく発作やかんたい発作、覚醒中に一瞬四肢がピクつくミオクロニー発作などのけいれん性発作だけでなく、けっしん発作や焦点意識減損しょうてんいしきげんそん発作などの非けいれん性発作もみられます。

きょうちょく発作

突然、意識を失って全⾝が突っ張り、⾝体が固くなる発作。チアノーゼ*を伴うことがある。

かんたい発作

全⾝や⾝体の⼀部をガクガクする発作。⼀時的に呼吸がとまることがある。

きょうちょくかんたい発作

突然発症して、きょうちょく発作とかんたい発作を反復する。発作後にもうろう状態になったり、眠ったりすることがある。

⾮定型ひていけいけっしん発作

数⼗秒間にわたりぼーっとする。話しかけても反応しない発作。⽬をパチパチする。

ミオクロニー発作

⼿⾜や顔、身体の⼀部が⼀瞬ピクッと収縮する発作。物を落としたり、転んだりする。寝起きや寝⼊りに起こりやすい傾向がある。

焦点意識減損しょうてんいしきげんそん(複雑部分)発作

数⼗秒間〜数分間、反応が低下し、⾝体の⼀部が無意識に動いたりする発作。

*チアノーゼ:血液中の酸素が不足し皮膚や唇、爪の先が青紫色になる症状

発作時の対処法

⽬の前で発作が起こると、とても慌ててしまうと思いますが、まずは、落ち着いて⾏動することが⼤切です。
1〜数分で治まるけいれん性発作であれば、その後10〜20分以内に意識が回復することが多いので、安全を確保しながら経過を観察してください。
ドラベ症候群ではてんかんじゅうせき状態に注意が必要です。けいれん性発作が5分以上続く場合は、すぐに救急⾞を呼び病院に⾏くようにしましょう。

発作が起こったらやるべきこと

  • 周囲の危険物を取り除き、安全な場所で横にする
  • 呼吸しやすいように服のボタンを外し、ベルトをゆるめる
  • 食事中であれば、食べ物や吐いた物がのどに詰まらないように顔を横に向ける
  • 発作が起こった時刻を確認し時間を測る、てんかんの様子を観察する(動画を撮る)

観察するポイント

  • ・起こった時間:「いつ」
  • ・起こった場所:「どこで」
  • ・起こった状態:「なにをしているときに」
  • ・発作のタイプ:「どんな発作が」
  • ・発作の持続時間:「どのくらいの長さの時間」

救急車を呼ぶ必要がある状態

  • 意識が回復しないまま、同じ発作を繰り返す(てんかんじゅうせき状態)
  • けいれん性発作が5分以上続く(てんかんじゅうせき状態)

救急車を呼ぶとき

慌てず落ち着いて、状況を伝えるようにしましょう。

1. 緊急搬送可能な、かかりつけ医への連絡時に伝えるべきこと

これから向かっていいですか?
  • ・患者の名前、主治医名
  • ・患者の状態
  • ・使⽤した薬(レスキュー薬など)

2. 「119」への救急要請時に伝えるべきこと

てんかんじゅうせき状態のため
迅速な対応が必要です!
  • ・患者の名前、病名、住所
  • ・かかりつけ病院名、主治医名
  • ・上記、かかりつけ医への連絡情報

緊急受診時の持ち物

緊急時にいつでも持ち出せるように、日ごろからひとつにまとめておきましょう。

受診に必要なもの

診察券 健康保険証 医療証 これまでの発作や治療を記録したもの お薬手帳

処置中や入院に必要なもの

常備薬 ミルク 哺乳瓶 オムツ おしりふき タオル 着替え 歯ブラシ コップ 
ストロー スプーン 印鑑 付添人の着替え など