フィンテプラ®を服用される患者さんとご家族へ

患者さんの声

紹介している内容は、個人の体験にもとづく感想や印象であり、すべての患者さんにあてはまるわけではありません。個々の患者さんの診断及び治療方法については、必ず医師とご相談ください。

vol.04 「迷いながらも挑戦し続ける」
− ドラベ症候群の娘と踏み出す希望の一歩 −

Fさん一家はご夫婦と、1歳10か月でドラベ症候群と診断され、現在5歳4か月になった娘さん、そして息子さんの4人で暮らしています。娘さんの治療は思うように進まず、後遺症は残らなかったものの急性脳症や重い副作用を経験してきました。しかし、治療薬を変更してから、発作の様子に変化が見られており、新たな目標も見つかっています。今回、診断までの道のり、治療の変遷、生活面での変化、病気とともに成長していく娘さんへの思いをお母さまに伺いました。

初めての発作
突然始まった発作。不安な日々を過ごすことになりました。

初めての発作は生後4か月の明け方のことでした。突然、大きく異様な声をあげて体がガクガクとけいれんし、目線は片方に寄り、よだれを垂らし、時間が経つにつれてチアノーゼも出てきました。

乳児期の熱性けいれんが出るのは6か月を過ぎてからだという認識だったので、どう対処すべきか分かりませんでした。結果的に、出生施設でもあるかかりつけの病院へ救急搬送されましたが、15分ほど続いたけいれんは救急車の中で落ち着き、病院到着時には普通に眠っているようでした。動転して症状をうまく説明できなかったこともあり、「発熱によるシバリングが疑われる」と言われ、釈然としないまま帰宅しました。

明け方に発作
再び明け方に発作。しかし『良性かもしれない』と言われ…

2週間後の明け方、同じような発作を再び起こしました。前回の反省から救急要請するとともに動画を撮影することに。今度は発作が長引き、病院到着後も続いていたため入院となりました。先生からは、「生後4か月での熱性けいれんは少なく、良性乳児てんかんの可能性が高い」と説明され、退院の翌週から外来で経過を観察することになりました。

繰り返す重積
『良性と違う』との専門医の指摘。期待と現実のギャップに苦しむことに。

良性乳児てんかんは自然に消えていくことが多いと聞き、半ば安心していました。ところが薬物治療を始めても発作は頻繁に繰り返し、30分以上続くことも。疑問が強まる中、週1回大学病院から来ている神経内科専門の先生に診てもらうと、「良性のてんかんとは明らかに異なる」との指摘で、別の薬による治療が始まりました。しかし、何度か増量したにもかかわらず、てんかん重積状態は多くみられ、服用薬をさらに1剤追加したのですが、てんかん重積が多発する状況は続きました。

急性脳症
ドラベ症候群が疑われ、検査を待つ中で急性脳症を発症しました。

そこで先生から、「てんかん重積発作が多く、ドラベ症候群の疑いがあるので、遺伝子検査を受けませんか」と提案されました。初めて聞く病名に戸惑いながらも説明を受け、自宅ではインターネットを使って情報を集めました。分からない点は外来受診のたびに質問し、理解を深めていきました。

その矢先のことです。てんかん重積発作に加えて意識障害もみられ、公立の小児専門病院を受診し、急性脳症疑いで脳平温療法などの治療を受けました。大学病院でドラベ症候群の遺伝子検査を予定していた約2か月前の出来事でした。幸いなことに、身体麻痺などの後遺症はほとんど残らずに済みました。

「ドラベ症候群」診断
ドラベ症候群の診断がもたらす不安。それでも覚悟を決めました。

ここに至るまでも、良性ではなさそうだと感じるたびに、娘の将来が想像できない不安に襲われていました。地元では欠かせない車の運転免許のこと、結婚や出産のことなど、考えれば考えるほど不安が募りました。

ただ、病名が分かったからこそ気を付けるべきことが明確になったのも事実です。以来、夏場の暑さやお風呂の温度など、日常生活の対策を徹底し、「てんかんと一緒に歩んでいく」という覚悟が芽生えてきました。

重い副作用
追加した薬による初めての重い副作用を経験し…

当時併用していた薬はいずれも増量していましたが、それでも発作の頻発を抑えることはできませんでした。そこで、さらにもう1剤が追加されたのですが、初期投与量の段階で、噛みつく、髪の毛を抜くなどの攻撃的な行動が現れました。副作用も疑われましたが、ちょうど保育所に通わせ始めた時期だったで、ストレスのせいかもしれないと考えられ、先生からも「イヤイヤ期を迎える年頃なので、判断は難しい」と言われました。しかし、その後も症状が続いたため、3か月ほどで中止し、今まで使用していなかった薬に切り替えることに。すると、これらの行動は見られなくなっていきました。

実は、先生からこの薬の説明も受けていましたが、病院の手続きの都合で使えるのが2か月後ということで、「その間に一度試してみては」との経緯から使ったのです。

新しい薬へ挑戦
新しい治療への挑戦。不安を抱えながらも一歩前に進むことにしました。

この薬のことは先生から説明を受けていましたが、前回の薬の経験もあり怖さがあったため、SNSやインターネットで実際の患者さん・ご家族の声や意見をいろいろ調べました。すると、やはりこの薬にも食欲不振や下痢といった副作用があることが分かり、とても不安でした。これらの症状は子供の成長や生活に深くかかわりますので。

それでも保育所に入り、風邪をきっかけとする発作が増えている時期だったので、「何としても発作を減らしてあげたい。挑戦するしかない。懸けてみよう」と決心しました。

発作の変化
現在のところ大きな副作用もなく、発熱時も発作を乗り越えられるように。

この薬に切り替えてから、今のところ大きな副作用はほとんどありません。以前は、発熱前に予告のように発作を起こすことがたびたびありましたが、それが減りました。また、発熱時の発作も、以前は抗けいれん薬を使っても20分以上続き搬送されることが常態化していましたが、この薬を段階的に増量していくにつれ、発作の経過に変化が見られました。さらに、風邪やRSウイルス感染の際も、発作は軽く済みました。その後は1年以上、発熱しても発作がみられない期間が続いています。現在はこの薬を含めて3剤を併用しており、うち1剤は減量中です。

生活の変化
保育所で過ごす日々から、活動の広がりや成長が見えてきました。

入園当初の1年は安全最優先で別室対応が多く、しばらくの間は私も付き添う日が続きました。でも発作が落ち着きだし、この1年発作が落ち着いている状態であることを踏まえて保育士さんたちに支えてもらいながら、今年は周りの子どもたちと一緒に活動できる時間が多くなっています。また、以前は発作後の体力回復に1〜2週間かかり登園が難しかったのが、今では風邪を引いても回復が早く、登園日数も増えています。現在9〜13時の時短保育ですが、それを15時まで延長できるよう、保育士さんたちと協力して取り組んでいるところです。

急性脳症の後遺症はほぼなく、検査では1歳程度の発達の遅れを指摘されていますが、娘なりのペースで着実に発達しています。ふらふらしていた体幹も最近はしっかりしてきて、成長の手応えが感じられるようになってきています。

次のステップ
娘の成長とともに、次のステップに進み始めています。

初めて家族で大きな公営プールに行くことができました。混雑や暑さのリスクを見極めながら、次は海水浴にも挑戦したいと考えています。小学校への進学に備えて、すでに面談を重ねています。先生方の理解もあり、私たちの不安は解消されつつあります。娘には、学校を思いきり楽しんでほしいと願っています。

メッセージ
治療にお困りのみなさんへ:
情報収集と対話、そして挑戦による前向きな選択を。

薬の副作用は個人差が大きく、“合う・合わない”があると思います。しかし、今回の経験で、「始める前から悩み続けるよりも、医師と相談しながら治療を試みることで、自分に合った方法を模索することが大切」と強く感じました。

ドラベ症候群とともに歩む道は決して平坦ではないけれど、一歩ずつ前に進むことで、生活の変化を感じました。そのための情報収集は欠かせませんし、かかりつけの先生や看護師さん、保育所・学校の先生方など、周りの方々との対話を重ねながら、最善の方法を選択していく姿勢が大切だと思っています。