2020年カレンダー絵画(3・4月)

愛宕山(愛宕山)

愛宕山(愛宕山)

兼先 恵子 作

季節:春 エリア:右京区

京見物と洒落こんだ旦那のおともで、芸舞妓とともに愛宕山に繰り出すことになった幇間(たいこ)の一八(いっぱち)。普段は威勢がいいものの、逃げるに逃げられず大苦戦。仲間の繁八(しげはち)に助けられ、息も絶え絶えに中腹の茶屋に。すると旦那が願掛けの土器(かわら)投げをしようという。ことごとく外す一八。旦那が今日はこれで試してみようと取り出したのは小判二十枚。次から次へと全部投げてしまう。拾った者にやるといわれた一八は、その小判を谷底まで拾いにいこうと茶店で傘を借りる。
落下傘代わりに傘を広げ、飛び降りようというのである。ところが、足がすくんで飛ぶことが出来ない。「シャレに背中を押してやれよ」と旦那にそそのかされた繁八が、一八の背中をドンと突いたからたまらない。傘にしがみついた一八は、風に乗ってスーッと谷底へ。「あった、あった、小判があった」と喜び報告する。だが「どうして上がる?」といわれてハタと困る。「欲張り、狼に食われて死んじまえ」などの罵声を浴びて一八は大慌て。着ていた絹物の羽織・着物・長襦袢を裂きはじめ、縄をこさえはじめた。その先に石を結び、長い竹の先に引っ掛けて手許に引き寄せると竹が満月のようにしなる。そのしなりを利用してヒラリと戻ってきた一八に、旦那はただ目を見張るばかり。「生涯贔屓にしてやる。ところで、金は?」「しまった。忘れてきた」。