2025年カレンダー絵画(表紙)
京都御苑の紫宸殿
兼先 恵子 作
季節:特定不可 エリア:上京区
源氏物語は京都御所を舞台に始まる。朱塗りの承明門と紫寮殿。物語には、平安時代の朝廷を中心とした皇室と貴族の生活が綴られており、しばしば紫震殿(南殿ともいう)での宴の模様などが語られている。
強く魅かれあった朧月夜との契り
第八帖『花宴(はなのえん)』
光源氏が二十歳の春、紫哀殿にて左近の桜を愛でる花の宴が催された。光源氏は春鴬囀(しゅうおうでん)を舞い、さらに詩の才も発揮する。そして夜、光源氏は藤壺の姿を求め、月明かりに誘われるまま宮中を彷徨っていた。戸口が開いた弘徽殿(こきでん)に立ち入ると、人影もなくひっそりしている。「朧月夜に似るものぞなき」と静けさのなかで響く女の歌声。光源氏は思わず声の主を部屋へ引き入れ、有明の月の下で契りを結ぷ。慌しい一夜が明け、二人は名乗る間もなく逢瀬のしるしに扇を取り交わして別れる。ひと月後に、右大臣邸で藤の花の宴が催された。招待された光源氏は、深夜に女君たちの寝殿に忍び込み、「扇子を取られてからき目を見る」と呼びかけて几帳越しにその人の手を取り、歌を詠みかけてあの女君を探し出す。光源氏はもう嬉しくて無我夢中。ところが彼女は近く東宮(後の朱雀帝)への入内を控える朧月夜、しかも弘徽殿の女御の妹だった。