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デュシェンヌ型
筋ジストロフィーの症状
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)では、幼児期に運動機能の低下やふくらはぎの肥大化(太くなる)などの初期症状がみられることが多く、症状が進むと肺や心臓などの臓器を中心にさまざまな合併症が現れます。
幼児期にみられる初期症状(運動発達の遅れなど)
デュシェンヌ型筋ジストロフィーの原因となるジストロフィン遺伝子の変異を持っていても、生まれてから歩きだすくらいまでの乳児期では目立った症状はみられず、異常に気づくことはあまりありません。しかし、歩き始め頃から運動発達の遅れに伴って、次のような症状がみられるようになります。
乳児期(出生直後から1歳半ごろまで)
特別な気づきは多くありません。
幼児期(1歳半ごろから5歳ごろまで)
1歳半ごろで歩き始める頃から、運動発達の遅れ、歩き方や立ち上がり方の異常、転びやすさなど、この病気でみられる特有の症状に気付かれるようになります。
3~5歳頃になると運動発達の遅れがさらに目立つようになり、5~6歳頃に運動機能のピークを迎え、今までできていた運動が徐々にできなくなっていきます。
動かしにくい体の部分はありますが、10歳ごろまでは自分の力で歩くことができます。
デュシェンヌ型筋ジストロフィーで特徴的な立ちあがり方の例(ガワーズ徴候)
デュシェンヌ型筋ジストロフィーで特徴的な歩き方の例(動揺性歩行)
ふくらはぎの肥大化
デュシェンヌ型筋ジストロフィーでは、ほとんどの患者さんで「ふくらはぎ(腓腹筋 )」がやや大きく(仮性肥大)、全身の他の筋肉と比べて硬い症状がみられます。他の種類の筋ジストロフィー(ベッカー型)でもみられる特徴ですが、なぜ筋ジストロフィーの特定の型に出現するのか、その原因はわかっていません。
診断のきっかけと血液検査値のめやす
デュシェンヌ型筋ジストロフィーでは、クレアチン・キナーゼ(CK※)や肝酵素(AST、ALT)の値が高くなることがあります。クレアチン・キナーゼ(CK)は筋肉中に含まれる酵素の一種で、筋肉が壊れると、血中に漏れ出てくるため値が高くなります。そのため、筋ジストロフィーに限らず、筋肉の病気で高くなることがあります。
肝酵素(AST、ALT)は主に肝臓機能のマーカーですが、筋肉にも含まれる酵素のため、筋肉が壊れると高い値を示します。いずれも血液検査で調べることができます。しかし、乳幼児健診では血液検査は実施されません。運動発達の遅れなどについて、健診時や保育園、幼稚園の先生に指摘されたり、普段の生活の中で気になることがあれば、かかりつけの小児科で血液検査を実施しましょう。
また、診断は偶然行った血液検査で血清CKが高値を示すことがきっかけになることが多いと言われています。感染症などで小児科を受診し、血液検査でASTやALTが高値を示すことがあります。肝疾患だけでなく筋疾患も鑑別に入れて、追加で血清CKを検査すると高値を示し、デュシェンヌ型筋ジストロフィーに気づかれることが少なくありません。ただし、これだけでデュシェンヌ型筋ジストロフィーとは判断できません。診断には、遺伝子検査や筋生検などが必要です。
※クレアチン・キナーゼはCPKと記載されることもあります。
デュシェンヌ型筋ジストロフィーの幼児期での血液検査値のめやす※※
血液検査の必須項目 | 検査値 |
---|---|
AST | 100~300 U/L 程度 |
ALT | 100~300 U/L 程度 |
血清CK | 数千~数万 U/L |
※※参照:石垣景子, Prog. Med., 40, 1019-1024, 2020.
症状が進むことでみられる合併症
個人差はありますが、病気が進みさらに筋肉が弱くなってくると、肺や心臓、胃や腸などの臓器の働きにも影響がみられるようになります。また、関節が硬くなる、背骨が曲がるなどの症状がみられることもあります。
5歳頃
個人差はありますが、運動発達の遅れが目立つようになります。また、足首や股関節などの関節が固くなってくる拘縮も見られるようになります。
10歳頃(歩行喪失時期)
歩くことが困難になります。
10代前半頃
上肢の筋力低下に伴う症状も現れるようになり、手を挙げて行う日常の動作(挙手、頭を洗う、コップを口元に運ぶ)が難しくなってきます。また、背骨が曲がることもあります(側弯症)。
10代後半以降
肺を動かす筋肉が弱くなることで呼吸がしにくくなったり(呼吸器障害)、心臓を動かす筋肉が弱くなることで心臓のポンプ機能が低下したり(心機能障害)することがあります。また、食事を噛んだり飲み込んだりするための筋肉が弱くなることで食べ物が飲み込みにくくなったり(摂食・嚥下障害)、胃や腸を動かす筋肉が弱くなることで便秘が起こりやすくなったりと(消化管障害)、様々な合併症がみられるようになります。