2020年カレンダー絵画(7・8月)

幽霊飴(六道の辻・六道珍皇寺)

幽霊飴(六道の辻・六道珍皇寺)

井隼 慶人 作

季節:夏 エリア:東山区

夜中に、六道珍皇寺(ろくどうちんのうじ)門前にある飴屋の戸を叩く音がする。店の者が出てみると、青白い顔の女。「夜分遅うにすみませんが、飴を一つ売っていただけませんか」と一文銭を差し出す。飴を渡すと大事そうに飴を持って、音もなく店から出て行った。女は六日間続けて飴を買いに来た。主人「あした銭持って来なかったら人間やないで」。店の者「なんでですねん」。主人「人間、死んだら三途の川の渡し賃として六道銭というて銭六文を棺桶に入れるんや。それを持って飴買いに来たんやないか。あした女が銭を持って来なくても飴はあげなさい。きっと冥界から毎晩通って来なければならない事情があるのだから」。
そして七日目、女は「今日はおあしがございませんが…」と言う。飴屋はただで飴を与え、後をつけさせたところ、女は高台寺の墓地へと入って行った。寺に顛末を話してそこを掘ってみると、お腹に子どもを宿したまま死んだ若い女の墓。幸いにも飴のおかげか、土中で生まれた赤子はまだ生きていた。子どものない飴屋の主人夫婦がこの子を引き取り、大事に育てた。後にこの子は立派に成長し、飴屋夫婦に孝行を尽くし、高台寺の坊さんになって飴で育ててくれた母親の供養をしたという。それもそのはずで、「こおだいじ(高台寺・子を大事)」。