基盤技術

私たちは、会社創立の大正8年(1919年)以来、約100年間にわたって研究開発型の新薬メーカーとして特長あるくすりづくりに取り組んできました。たとえ患者数の少ない疾患や難病の治療薬であっても、病気に苦しむ患者さんにとって福音となるくすりの開発に、積極的に取り組んでいます。創立以来受け継がれてきた、「自分たちの手で新しいくすりを創ろう」という熱い思いは、日本新薬社員のDNAとして受け継がれています。時代のニーズに合わせた研究開発の姿勢は、現在に至るまで脈々と受け継がれており、創業当初より培ってきた研究開発力は当社の強みとなっています。

過去の研究開発のイメージ

今後は低分子医薬品の「ウプトラビ」を生み出した創薬基盤に、核酸医薬品や遺伝子治療などの新規創薬モダリティ、核酸DDS技術などを加えることで、他社にはない独自の創薬力を強化しています。また、オープンイノベーション活動を推進し、社内外の資源を最大限活用していきます。当社の研究開発力を生かし、有効な治療薬を一日でも早く、そして一人でも多くの世界の患者さんに届けるために事業活動を推進していきます。

低分子医薬品のNS-304、核酸医薬品のNS-065/NCNP-01を生み出した創薬基盤に、
新たなモダリティ・技術を加え、創薬の幅を広げることで、新たな価値を創造する

低分子医薬品のNS-304、核酸医薬品のNS-065/NCNP-01を生み出した創薬基盤に、新たなモダリティ・技術を加え、創薬の幅を広げることで、新たな価値を創造する

創薬基盤のイメージ

低分子医薬の開発

会社創立以来、自社創薬にこだわり研究開発を続けてきました。当社の自社創薬の基盤は、低分子創薬であり、当社の強みの一つです。低分子創薬は、リード化合物探索から、リード化合物の最適化を行い、候補化合物を見出します。その過程では、コンピューターを用いたインシリコ創薬、薬理部門による薬効評価、動態・安全性部門による薬物動態と安全性の評価、低分子創薬にかかわるこれらの部門が一体となるチーム力が当社の強みの源泉です。その結果、自社創製低分子医薬品である肺動脈性肺高血圧症治療剤「ウプトラビ」を2016年に上市しました。

自社創薬開発のイメージ

核酸医薬品の開発

日本新薬本社

独自性のある製品を生み出す研究開発の一つに、東部創薬研究所で取り組む核酸医薬品が挙げられます。病因遺伝子を直接標的とする核酸医薬品は、低分子医薬品では治療が難しい疾患に、新しい原理に基づく治療の可能性をもたらすことから、抗体医薬に次ぐ次世代医薬品として世界中から期待されています。そのため、核酸医薬品の需要は今後さらに拡大するものと考えています。

当社は、核酸医薬品の創薬として、デュシェンヌ型筋ジストロフィーに有効な新薬の開発に取り組んできました。デュシェンヌ型筋ジストロフィーとは、筋肉細胞の骨組みを作るジストロフィンと呼ばれるたん白質の遺伝子に変異が起こり、正常なジストロフィンが作られなくなることで筋力低下が引き起こされる重篤な遺伝性筋疾患です。当社は、核酸医薬だからこそ実現可能なエクソン・スキップ作用を持つデュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬「NS-065/NCNP-01(一 般 名:ビルトラルセン)」を2020年に国内および米国で発売しました。

エクソンスキップ作用とは
(ビルテプソの作用機序)

DNAには、タンパク質を作る遺伝情報をコードする領域(エクソン)とコードしない領域(イントロン)があります。
DNAの遺伝情報は、エクソンとイントロンを両方含む形でmRNAの前駆体に転写されます。※図1
次に、mRNA前駆体からタンパク質をコードするエクソンの部分だけを連結したmRNAが作られます。※図2
さらに、このmRNAを設計図としてタンパク質が合成されます。※図3
核酸医薬品は、疾患の原因となる遺伝子に高い特異性を持って直接作用することが可能であるため、これまでアプローチが難しかった遺伝性疾患治療薬を開発できることが期待されます。
「ビルテプソ」を投与する前は、エクソン53より上流の特定エクソン欠失のため、mRNAの読み取り枠にずれが生じて、ジストロフィンタンパク質が合成されない状態になっています。しかし、アンチセンス核酸である「ビルテプソ」は、ジストロフィン遺伝子に作用してエクソン53を取り除くことで、この読み取り枠を回復させることができます。また、このようにエクソン53スキッピングによって治療できる患者さんは、遺伝子診断により特定することができます。
エクソン53スキッピングにより生成したジストロフィンタンパク質は通常より短くなりますが、機能のあるタンパク質であり、DMD患者さんの筋力低下を抑えることが期待できます。

エクソンスキップ作用のイメージ図
エクソンスキップ作用のイメージ図

出典:青木吉嗣ほか:別冊医学のあゆみ 筋ジストロフィー・筋疾患-最近の進歩. 医歯薬出版. P6, 2017

オープンイノベーション

自社創薬に留まらず、オープンイノベーションにより、多くの取り組みを行っています。2020年7月には、ヘルスケア専門の独立系ベンチャーキャピタルである株式会社メディカルインキュベータジャパンが新設したバイオテックファンドに出資しました。出資を通じて、日本、英国、イスラエル等の将来有望な新規候補化合物や最先端技術を有するベンチャー企業とのネットワークを構築・強化することで、開発パイプラインの充実、当社独自の革新的なイノベーション創出に寄与することを期待しています。

オープンイノベーションのイメージ図

創薬モダリティ

これまで培ってきた低分子医薬品・核酸医薬品の創薬力に、AIやiPS細胞など新たな技術を加え、また遺伝子治療など新たなモダリティに取り組むことで創薬の幅を広げ、他社にはない独自の創薬力を強化します。
これらの研究開発活動を通じ、新たな価値のある製品を創造し、継続的に特徴ある新薬を提供し続けることで、持続的な成長を目指します。

創薬モダリティのイメージ図