社外取締役対談

日本新薬がグローバルに持続的な成長を実現するために、リーダーのあるべき姿や日本新薬に必要な人財像、今後取り組むべき課題などについて、社外取締役の皆さまに率直に語っていただきました。

戦略をもって、グローバル展開を担う「とがった人財」の育成を

櫻井:
社外取締役 櫻井 美幸

指名・報酬委員会では提示される原案を審議し、合理的で納得性のある説明をいただき、異論なしと答申してきました。一方で、経営を担う人財に求める人物像や育成方針など、都度検討する「点」ではなく、戦略的に「線」を描くように検討しなければ、候補者の選定方法や報酬の決定方針が伝わってきません。前回の指名委員会ではこの点をお伝えしています。

小林:

私も、人事や報酬の決定には、会社の戦略が必要だと思います。第七次中期経営計画の策定に向けて、会社全体の人財のあり方が議論されています。ポジションに合わせた戦略的な議論が必要です。例えば、日本新薬が目指すグローバル展開を実現するには、これまで以上に多くのリスクが生じます。そのすべてにトップ一人で対応するのは困難で、さまざまな知見が不可欠です。取締役全員が経営者と同じ目線で事業を見て議論できるようになると、取締役会の貢献度は飛躍的に向上すると思います。

社外取締役 小林 柚香里
櫻井:

会社のトップには、外部環境の変化に応じて経営のかじ取りを行う経営知識、さらに柔軟にスピード感をもって対応できる強力なリーダーシップや周囲を巻き込む人間的な魅力も求められます。それを支える取締役会については、まずスキル・マトリックスの議論が必要であり、日本新薬の取締役に必要なスキルを検討して項目を立て、その上で各部門のトップである取締役には、担当部門に限らず会社全体を俯瞰的に見て、自部門と全体、両方の視点から遠慮なく議論いただきたいと感じています。

和田:
社外取締役 和田 芳直

それが進むと、トップだけが経営を考えるのではない、集団指導体制が実現します。今、理系出身の方が経営を学び、社長を務める会社も多く存在しており、日本新薬でも将来、身をもって技術の進化を経験してきた方がトップになる可能性もあります。一方で、社内でトップの育成を進めても、未来永劫トップが社内から輩出されるとは限りません。さまざまな視点から10年後、30年後を見据え、透明性高く人財に関する指針や戦略を決めてほしいと考えています。

小林:

人財戦略ほど取締役会で時間をかけて議論している話題はありません。日本新薬の社員は、社内外から「いい人」だと高評価を受けています。その良い点は残しつつ、環境の変化に順応して「変われる人財」であることが求められていると思います。

櫻井:

最近の取締役会では、「とがった人財」、言い換えると「異質な人財」が必要だと話題になっています。当社でも人事制度の抜本的な改革が進められており、会社は「いい人」であることを抜け出し、一人ひとりがさらに成長することを求めていると感じます。

和田:

今、積極的に進めているキャリア採用の過程で、異質な考え方や変わることに対する意欲が持ち込まれ、多くの社員が刺激を受けることを期待しています。人事制度改革では、ジョブ型雇用の導入も進められています。中井社長は、社員の成長につながるようなジョブ・ディスクリプションの書き方が大切だとおっしゃっており、私も同じ思いです。ジョブ型雇用では、自分に与えられた仕事を達成するために、状況に応じて優先順位を自分で定め、ある部分はやり過ごすことのできる能力も必要だと考えており、これが「とがった人財」につながるのかもしれません。

小林:

一方、社員は自身のキャリアを考える手掛かりともなります。会社はどういう人財が必要かを明確にし、正当に評価できる制度の整備と人財の育成を進めなければなりません。社員は自身のキャリアを選択する権利を持っており、自分に合った環境を選ぶ、という選択肢もあるのです。

櫻井:

評価という意味では、現在の取締役の報酬制度も検討が必要かもしれません。中長期的な業績連動に対応させるため、第七次中期経営計画の策定時に株主報酬を取り入れるかどうかも含め、議論が進むことを期待します。

「なくてはならない会社」を目指し、さらなる成長に向けた転換点

和田:

第七次中計の策定では、喫緊の課題である研究開発やパイプラインの拡充、そしてグローバルにおけるコンプライアンスの確保をどう進めるか検討しなければなりません。グローバルについては、まだ体制整備は緒に就いたばかりであり、その点にリスクがあるように思っています。

小林:

グローバルに事業を拡大するには、価値観や商習慣、セキュリティに対する認識などが国や地域によって異なることを理解し、取締役会でもさらにリスク管理に力を入れていく必要があります。社外から社内の議論が見えにくい点も課題だと感じています。例えば、中計立案時の戦略面の議論や優先順位の付け方など、経緯も含めて情報を共有いただけると、より建設的な意見が述べられます。こういった意見はすでに実現されたものも多いので、真摯に検討され改善の方向にあると感じます。また、市場の変化に合わせて、どれだけ迅速に事業を再構成し競争力を高めていくかといった議論が熱く交わされています。それが早く実現するよう、私たちも社外取締役として貢献したいと考えています。

櫻井:

10年連続の成長を経て中井社長が掲げた3つのコミットメント(「社長メッセージ」)は、日本新薬がさらなる成長に向けた転換点にあることを示しています。国境を越えて、一刻も早く、一人でも多くの患者さんに健康を届けること、社員一人ひとりが働きがいをもって成長できることを目指しているこの会社の魅力を、ステークホルダーの皆さまには信頼いただきたいと思います。

和田:

日本新薬は、「ヘルスケア分野で存在意義のある会社」、患者さんや医療関係者にとってなくてはならない会社を目指しています。その実現に向けて次のステップに入る段階にあり、それが会社の成長にもつながると信じています。

新任社外取締役メッセージ

社外取締役 西 真弓

1980年薬剤師免許、1991年医師免許取得。愛知県がんセンター研究所、京都府立医科大学、同大学院を経て、2009年奈良県立医科大学医学部教授に就任。2023年4月より同大学医学部名誉教授(現任)。2023年6月、当社社外取締役就任。

このたび取締役に就任しました西真弓でございます。重責を担うことになり、大変身の引き締まる思いです。私は薬学部を卒業後、がん研究所に勤務する中で、医学を学びたいという思いが強くなり、医学部に再入学しました。医学部卒業後は数年間の臨床経験を経て、神経内分泌学の基礎研究の道に進み、京都府立医科大学、奈良県立医科大学の解剖学教室にて30年余り研究・教育に携わってきました。
日本新薬のガバナンスに関しては、薬学部、医学部における経験を踏まえ、創薬に向けた研究開発への関与が私に求められていると思います。私はこれまで広い意味での神経科学研究に携わってきました。神経系の難病・希少疾患にはいまだ有効な治療薬のないものも多いので、日本新薬のこれまでの研究開発実績を活用し、さらにその分野での創薬を進めることを期待します。
今、製薬企業はAI創薬を中心に大きな転換期を迎えていると思います。また、日本新薬は大学や研究機関との連携を一層強化し、独自性の高い創薬を進める必要に迫られていると思います。その意味で、これまで私が培った研究者ネットワークが活用できないかと考えています。
私の研究者・医師としての視点および学会などで築いてきた人的ネットワークなどを活用し、日本新薬のより一層の発展に向け努力する所存ですので、どうぞよろしくお願い申し上げます。