プレスリリース・お知らせ

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NEWS 2015

2015年03月23日 研究開発
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デュシェンヌ型筋ジストロフィー治療剤NS-065/NCNP-01の早期探索的臨床試験の終了のお知らせ

 国産初のアンチセンス核酸医薬品であるデュシェンヌ型筋ジストロフィー治療剤NS-065/NCNP-01の早期探索的臨床試験のすべての投与が終了し、初期の解析において、本剤の治療効果を予測するジストロフィンタンパク質の発現が確認されました。この結果を受け、本治験薬の開発を進めていきます 

 

 日本新薬は、独立行政法人国立精神・神経医療研究センター(小平市、理事長:樋口輝彦、以下 NCNP)と両者で開発を進めているデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)治療剤(開発番号:NS-065/NCNP-01)の早期探索的臨床試験について、その予定した投与がすべて終了しましたのでお知らせします。
 本試験は、国産初のアンチセンス核酸医薬品であるNS-065/NCNP-01を、ヒトに対して初めて投与した臨床試験であり、NCNP病院において10例のDMD患者さんに対して行われました。低用量群、中用量群、高用量群の3群で実施され、主要評価項目である安全性の他、ジストロフィンタンパク質の発現などの有効性についても検討を行っています。
 NCNPによる初期の解析の結果、いずれの群においても、エクソン53がスキップしてアミノ酸読み取り枠のずれが修正されたジストロフィンのメッセンジャーRNAが検出されました。さらに、高用量群の一部の被験者においては、このメッセンジャーRNAから翻訳されたと考えられるジストロフィンタンパク質の発現が確認されました。これらの結果から本剤は、DMDに対する治療効果が期待されます。
 また、本治験を通じて重篤な有害事象の発生はなく、投与を中止した例もありませんでした。一般的な有害事象としては、腎機能への軽度の影響や貧血が見られました。
 NCNPは現在、安全性やジストロフィンタンパク質の発現等についての詳しい評価を行っています。試験結果の概要は、5月に開催される第18回米国遺伝子細胞治療学会、第56回日本神経学会学術大会など関連学会で発表する予定です。
 日本新薬は、本医師主導治験の結果を受けて、NCNPとの共同開発契約のもと臨床試験を引き継ぎ、2018年度の国内上市に向けて、次の治験の準備を進めています。

※本医師主導治験は、以下の助成を受けて進められています。

・厚生労働科学研究費
 平成24-26年度医療技術実用化総合研究事業(臨床研究・治験推進研究事業)
 平成23-25年度障害者対策総合研究事業(神経・筋疾患分野)
 平成26年度障害者対策総合研究開発事業(神経・筋疾患分野)
・精神・神経疾患研究開発費

以上


【用語の説明】
<デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)とエクソン・スキップ治療>
 DMDは、男児に発症するもっとも頻度の高い遺伝性筋疾患で、ジストロフィンと呼ばれる筋肉の細胞の骨組みを作るタンパク質(ジストロフィンタンパク質)の遺伝子に変異が起こることで、正常なタンパク質が作れなくなり、筋力が低下してやがて死に至る重篤な疾患です。現在、その進行を遅らせるステロイド剤以外に有力な治療法は存在せず、新たな治療法の開発が期待されています。
 「エクソン・スキップ治療」は、アンチセンス核酸と呼ばれる短い合成核酸を用いて、遺伝子の転写産物(メッセンジャーRNA)のうち、タンパク質に翻訳される領域(エクソン)の一部を人為的に取り除くことで(スキップすることで)、アミノ酸読み取り枠のずれを修正する治療法です。正常なジストロフィンタンパク質に比べると、その一部が短縮するものの、機能を保ったジストロフィンタンパク質が発現し、筋機能の改善が期待できます。この治療の対象となるエクソンは、患者の変異形式に応じて異なり、NS-065/NCNP-01は、エクソン53を対象としています。

<NS-065/NCNP-01>
 本治験薬は、強力な薬効と高い安全性が期待される、モルフォリノ化合物で合成されたアンチセンス核酸と呼ばれる核酸医薬品です。本剤は、ジストロフィン遺伝子のエクソン53スキップに応答する遺伝子変異を有するDMD患者さん対象に開発した薬剤であり、DMD治療における重要な選択肢として期待されています。

<核酸医薬品>
  核酸医薬品は、遺伝子の構成成分である核酸の構造を持ち、疾患の原因になる遺伝子を標的とする薬剤です。その遺伝子から作られるタンパク質の産生を止める、又は調節することで効果を発揮します。従来の低分子医薬品では難しかった疾患の治療が可能になると期待されており、特異性が高く安全性の面にも優れることから、次世代の医薬品と言われています。