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NEWS 2016
当社が創薬したセレキシパグの、導出先企業による欧州医薬品庁医薬品委員会の承認勧告受領のお知らせ
日本新薬が創製し、2008年4月にアクテリオン社(本社:スイスAllschwil、最高経営責任者:Jean-Paul Clozel, M.D.)に導出したセレキシパグ(開発記号:NS-304、欧州での商品名:Uptravi®)について、このたびアクテリオン社が欧州医薬品庁の医薬品委員会から承認勧告を受領しましたのでお知らせします。
以下のリリース文は、アクテリオン社のプレスリリースを参考までに和訳したものです。内容については、アクテリオン社のオリジナルの英文が優先することをご了承ください(アクテリオン社のWEBサイトでご確認ください)。
【以下、ご参考:アクテリオン社のリリース文和訳】
2016年1月29日
アクテリオンはUptravi(セレキシパグ)による肺動脈性肺高血圧症の長期治療に対する欧州医薬品庁ヒト用医薬品委員会(CHMP)の肯定的意見を受領しました。
- 欧州委員会(European Commission)は、承認に関する最終決定を67日以内に行う見込み
スイス アルシュヴィル発– 2016年1月29日– アクテリオン社(SIX: ATLN)は、日本新薬が創製した、経口で有効なIP受容体選択的作動薬であるUptravi(セレキシパグ)について、欧州医薬品庁(EMA)のヒト用医薬品委員会(CHMP)が、PAH治療薬としての使用に関し肯定的意見を発表したことをお知らせします。
CHMPは、WHO機能分類II度‐III度のPAH成人患者に対するUptraviによる長期治療について、欧州委員会による承認を勧告しました。Uptraviは、エンドセリン受容体拮抗薬(ERA)とホスホジエステラーゼ5阻害薬(PDE-5i)の両方またはいずれか一方による治療では管理不十分な患者に対する併用療法として、あるいはERAやPDE-5iによる治療対象とはならない患者に対する単剤療法として使うことができます。
その有効性は、特発性および遺伝性PAH、結合組織病に伴うPAH、修復済み単純先天性心疾患に伴うPAHなどのPAH患者集団において示されました。
CHMPの肯定的意見は、WHO機能分類I度-IV度のPAH患者を対象とした長期PhaseIII試験GRIPHON試験において得られた、有効性および安全性データの審査結果を根拠の一部としています。患者は、ERA、PDE-5iの両方またはいずれか一方との併用投与、あるいは単剤投与としてUptraviによる治療を受けました。試験に参加した患者は、特発性および遺伝性PAH(58%)、結合組織病に伴うPAH(29%)、シャント修復済み先天性心疾患に伴うPAH(10%)でした。
GRIPHON試験の運営委員会メンバーであるMarius Hoeper, MDは以下のように述べています。
「 プロスタサイクリン経路はPAH治療において標的とすべき基本的経路の一つです。しかしながら、患者や介護する方にとって既存薬の投与方法は著しい負担を生じ、そのためこれまで治療に十分取り込まれてきたとは言えません。今回の肯定的意見により、優れた長期予後の成績に裏付けされた有効な経口薬として、Uptravi(セレキシパグ)がEMAに承認されることに一歩近づきました。」
セレキシパグの安全性は、症候性PAH患者1,156例が参加して実施された長期プラセボ比較試験において評価されました。平均投与期間は、セレキシパグ投与患者が76.4週間(中央値70.7週間)、プラセボ投与患者が71.2週間(63.7週間)でした。セレキシパグの投与期間は最長で4.2年間に達しました。
Uptraviの薬理学的作用に関連のある副作用のうち、最もよく観察されたものは頭痛、下痢、吐き気および嘔吐、顎の痛み、筋肉痛、四肢の痛み、関節痛、顔面紅潮でした。これら副作用は用量漸増期間において、より頻繁に観察されました。これら副作用の大部分は軽度あるいは中等度のものでした。
アクテリオンCEOのJean-Paul Clozel, MDは以下のように述べています。
「私たちは本日のCHMPによる肯定的意見に感激しています。米国ならびにカナダに続く承認であり、UptraviによってPAH患者の長期予後が飛躍的に改善されると信じています。欧州委員会による販売承認が下りれば、Uptraviによってプロスタサイクリン経路の治療をより多く患者に提供することができると信じています。」
CHMPの肯定的意見は、欧州委員会により販売承認が認可される前の最終段階の一つです。欧州委員会は、2016年4月上旬までに最終決定を下すと予想されます。
- GRIPHON試験の成績
GRIPHON試験は、1,156例の患者において最長4.2年の投与を行った長期グローバルPIII試験です。試験に参加した被験者は、80%以上が既存のPAH治療薬の投与を受けていました。GRIPHON試験において、セレキシパグは主要評価項目である死亡や病態悪化の発生リスクをプラセボ比で40%低下させました(p<0.0001)。
セレキシパグの有用性は、PAHの病型、機能分類や、ERAとPDE-5iの併用療法などのPAH基礎治療といった、既定の部分集団においても一貫して認められました。
忍容性に基づいてセレキシパグを個別維持用量まで漸増することで、検討された用量範囲において長期予後ベネフィットを得ることができました。GRIPHON試験において、治験薬の投与は1回あたり200 μgを1日2回から開始され、1週毎に200 μgずつ増量し、最高で1回あたり1600 μgを1日2回投与しました。最大耐用量へ漸増することで、低用量群(200、400 μgを1日2回)、中用量群(600、800、1000 μgを1日2回)、高用量群(1200、1400、1600 μgを1日2回)のいずれの既定の部分集団においても、セレキシパグの有用性は一貫して認められました。
- 各国における審査状況
アクテリオンは2014年12月に米国FDAおよび欧州EMAに申請資料を提出しました。2015年12月21日に米国FDAから、2016年1月21日にはカナダ保険当局からそれぞれ承認を受けました。その他各国の保健当局への承認申請も継続して進めており、日本をはじめ、オーストラリア、ニュージーランド、韓国、スイス、台湾、トルコでは審査中です。
- UPTRAVI® (セレキシパグ)について
Uptravi (セレキシパグ)は、日本新薬が創製した、強力かつ経口投与可能なIP受容体選択的作動薬の錠剤です。Uptraviとその主要代謝物は、プロスタサイクリン受容体(IP受容体)に選択的に作用します。IP受容体は5つある主要なプロスタノイド受容体(IP、EP、DP、TP、FP)のうちの1つです。プロスタサイクリンはIP受容体を活性化し、血管拡張を誘導し、血管平滑筋の増殖を阻害します。
- GRIPHON試験
GRIPHON試験(Prostacyclin (PGI2) Receptor agonist In Pulmonary arterial HypertensiON)は、多施設共同プラセボ対照二重盲験無作為化試験であり、PAH患者におけるセレキシパグ経口投与の長期有効性と安全性を評価しました。
GRIPHON試験は、PAHを対象とする過去最大の無作為化比較試験であり、北南米、欧州、アジア太平洋の39カ国181施設で実施され、1,156例のPAH患者が参加しました。患者はセレキシパグあるいはプラセボを1日2回服用し、加えて、3か月以上投与量が安定している場合に限り、基礎治療としてPAH治療薬の服用を継続することが可能とされました。試験参加時点で、全体の80%の患者がERA、PDE-5阻害薬のいずれか、あるいは両方のPAH治療薬を服用していました。
このピボタルなイベント駆動型の試験は、セレキシパグ投与により病態悪化・死亡が最初に発生するまでの期間がプラセボ比で延長されることを実証し、ならびに、PAH患者におけるセレキシパグの安全性プロファイルを評価するためにデザインされました。試験において医師より報告された全ての病態悪化・死亡のイベントは、3人で構成される独立重要イベント委員会にて盲験下で審査されました。
- GRIPHON試験での安全性および忍容性について
試験全体で、プラセボ投与患者のうち41例(7.1%)、セレキシパグ投与患者のうち82例(14.3%)が有害事象により治験薬投与を早期に中止しました。セレキシパグ投与群における投与中止の原因となった有害事象のうち、最も多かったもの(セレキシパグとプラセボの差が1%超)は、頭痛(3.3%)、下痢(2.3%)、吐き気(1.7%)でした。甲状腺機能亢進症が8例のセレキシパグ投与患者にみられ、うち1例が治験薬投与を中止しました。セレキシパグ投与群により高頻度に発生する重篤な有害事象(セレキシパグとプラセボの差が1%超)はありませんでした。プロスタサイクリン特有の有害事象は用量漸増期間においてより頻繁に観察されましたが、これら有害事象は個別の最大耐用量を決定する際の指標として使われました。
- プロスタサイクリン経路の役割
プロスタサイクリン経路は、PAHの病態生理ならびに治療に関連する、最も良く特徴が分かっている3つの経路のうちの1つです。プロスタサイクリンはプロスタノイドであり、人体においてシグナル分子として働いています。プロスタサイクリンは、他の血管作動性物質と同様に、内皮細胞により産生されます。プロスタサイクリンは血管拡張作用、細胞増殖抑制作用、抗炎症作用ならびに血小板凝集抑制作用を持ちます。特定の疾患においては、内皮細胞によるプロスタサイクリン産生が損なわれ、結果として過剰なエンドセリンやトロンボキサンによる有害な作用が現れます。
以上