前立腺の病気とは?

前立腺という臓器は男性特有の臓器でなじみが薄いかも知れませんが、現在の超高齢社会では、「前立腺肥大症」や「前立腺がん」という病気を見聞きする機会が多いのではないでしょうか。
わが国の平均寿命は世界の最高水準に達し、高齢男性に前立腺の病気が急増しています。たとえば前立腺肥大症は排尿障害の原因にもなるため生活の質(QOL)を低下させます。また、前立腺がんは進行すれば致命的になるので早期発見が重要です。
一方、前立腺の病気は必ずしも高齢男性に限られたものではなく、青壮年男性にもみられます。この場合は主に「前立腺炎」という病気が多く、性感染症の合併や、不規則な生活習慣やストレスの多い現代社会を反映して増加傾向にあります。
高齢者はもちろんのこと若い人でも排尿に関する異常を感じたら、前立腺の病気を疑ってみることが重要です。

前立腺の位置

前立腺は男性の骨盤内にある臓器で、膀胱に近い尿道を取り囲んでおり、後方は直腸に接し、肛門から指を入れると直腸壁を通して容易に触れることができます。大きさと形は栗の実に似ており(図1)、その内部構造は4つの部位からなります(図2)。
前立腺から分泌される前立腺液は射精の際に放出される精液の20%前後を占めており、精子の運動と栄養補給に役立っています。前立腺は子孫繁栄のために非常に大切な臓器といえます。

前立腺の位置

前立腺と年齢の関係

前立腺は思春期を境に急激に大きさを増して約20グラムに達し、45歳ぐらいまでほぼ横ばいの状態が続きます。
ここまでは誰にもみられる傾向ですが、その後の変化は個人によって異なり、萎縮と肥大のいずれかの方向に進みます。肥大の場合には、60歳代になるまでに急激に大きくなります。この場合、前立腺全体がそのまま大きくなるのではなく、移行領域とよばれる部分が肥大します。
前立腺が年齢とともに肥大する原因には、1)前立腺内の男性ホルモンが増える 2)成長因子の作用 3)上皮細胞と細胞間質の相互作用 4)炎症の存在などが考えられています。さらに最近では、5)生活習慣病(糖尿病、高血圧、肥満など)との関連が注目されています。

前立腺と年齢の関係

前立腺の病気の診断

病気の診断は、患者さんの訴えがどういうものか、それはいつから始まったのか、どのような経過をたどってきたのか、などを聞く問診から始まります。
これらの情報によって病気の様子の大半がわかりますので、自分の症状を正確に伝えることが大切です。
症状から前立腺の病気が疑われたら、国際前立腺症状スコア(IPSS)という問診票を用いて症状や重症度を確認します。また、前立腺の大きさを調べるために超音波検査も行います。このほか、直腸診を行うことがあります。

正常の場合は前立腺は栗の実ぐらいの大きさで、表面が滑らかで弾力がありますが、炎症が起こっているとゴムボールのように腫れて圧迫すると激しく痛みます。前立腺肥大症では、鶏卵大あるいはそれ以上の大きさになり、やや硬くなります。また、前立腺がんの場合には表面がデコボコで石のような硬さになります。
さらに前立腺の病気の診断と病状経過や治療効果を確かめるために以下のような検査が行われます。

  • ・尿検査
  • ・尿流測定
  • ・残尿測定
  • ・排尿日誌
  • ・血清前立腺特異抗原(PSA*)値測定
  • ・尿流動態検査など

*PSAは前立腺でつくられる物質で、血液中のPSA量が増えると前立腺がんが疑われます。